ブラジル北部の女性シンガーによる先鋭的にミスティーク、かつビオロジックなポピュラー音楽、ジブリ的ローカライズとの共通項
一月の金曜日は毎週ジブリ作品がTV放映されるので、密かに再認識の意味もこめて子ども共々楽しみにしています。今日は「耳をすませば」ですね。学生時代4年間通った聖蹟桜ヶ丘が舞台なので懐かしくなるのでしょう、今日も。本日ご紹介差し上げるこの盤を聴いた時、昨年フェルナンダ・タカイ・アコースティック・ツアーで訪れた山形の風景が舞台になっていると教わった、ジブリの「おもひでぽろぽろ」のことを思い出しました。農家の皆さんがベニバナを摘んで、ルージュの原料とするシーンがありますが、このパトリシア・バストスの唄って居ることは、まさにそれなのではないかと。
アルバム・タイトルのバトン・バカナとは、椰子の一種で作られた口紅のこと。アマゾン川流域の北部アマパ州マカパーで教師の父と歌手の母のもと生まれ、90年代からバンド活動を経てバーでソロ活動を開始、当初よりアマパの民間伝承をはじめとするローカライズされたルーツ音楽に敬意を表したレパートリーを中心に唄ってきたそう。webメディア www.embrulhador.com の選ぶブラジル音楽100選の第4位に選出されています。
PATRICIA BASTOS / BATOM BACANA(ブラジル直輸入盤 1,750円+税)
自身6作目となる本アルバムでは、サンパウロの前衛/哲学的なムーヴメントを牽引してきたダンチ・オゼッチがプロデュース。ダンチとの共作者としてルイス・タチがクレジット。ベース奏者ドゥ・モレイラのエレクトロ・エッセンスを含む先鋭的なサウンド構築と、ルーツ・パーカッションのトリオ・マナリの紡ぎ出す生の打楽器アンサンブルが交錯、アマパ州発祥の舞踏リズム - マラバイショから、弦楽を携えた穏やかな叙情まで、ロジカルなサウンド構築が為されています。そして華やかにそよぐパトリシア・バストスの唄声は神秘的なムードさえ漂わせます。パトリシアと同郷・近郊出身のミュージシャンたちによって作られた楽曲は、ゼカ・バレイロ作のm-1"Loba Boba"はインテリジェントなクンビアのようにも聴こえますし、webの音楽サイトで最大限の賛辞をおくられたヴァル・ミリョメン=ジョアンジーニョ・ゴメス作m-4"Mei Mei"は、エクスペメントなカリンボーのように聴こえます。ダンチ・オゼッチのきょうだい、ナー・オゼッチが参加したm-8"Horizonte"は、オブスキュアなトラックにポエトリー・リーディング的なアプローチを施すという前衛文芸的佇まい。ヘナート・ホーザ=ホナウド・シウヴァ作m-10"Mambo d'água"で見せるトロピカル・テイスト、エレクトロ化されたヴァル・ミリョメン=ジョアンジーニョ・ゴメス作のもう一曲、m-13"Mameluca"、きょうだいのミュージシャンパウリーニョ・バストスが書いた3曲も含め、前衛モダンで豊かな彩りと故郷の自然を愛でるロジカルな想いが見事に結晶しています。
- 2017.01.27 Friday
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- 16:27
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- by 大洋レコード