知られざる川沿い音楽のレパートリーをギターと唄のみのデュオで表現した「ysyvy」が好評の女優兼女性シンガー - フロレンシア・ボバディージャですが、あちらは2015年4月、遡ることわずか1か月の2015年3月にレコーディングされたのが本日ご紹介する「Cipsela」です。
FLOR BOBADILLA, IGNACIO AMIL / CIPSELA (アルゼンチン輸入盤 2,416円+税)
アドリアン・イアイエスに師事し、その後助成金を受けてニューヨークでジャズ・ピアノを学んだイグナシオ・アミルと、表現力に富んだ女性ヴォーカリスト、フロレンシア・ボバディージャのデュオ名義となる本作では、ラモン・アジャラ"Volver en un cuerto"やレギサモン"Zamba de Juan Panadero" 、カルロス・アギーレ"En la frontera"、スピネッタ"Ekathe" にブラジルからジルベルト・ジル作"Meio de campo"の鮮やかなカヴァーに、ベネズエラのシモン・ディアス"Sabana"に至るまで、ラテン・アメリカ中のレパートリーを洗練されたジャズのエッセンスを散りばめたコンテンポラリー・フォルクローレのスタイルで表現。彼らの師匠格にあたるロサナ・アメド(vo)のゲスト参加、そしてフアン・パブロ・ディ・レオーネ(flute)やマルティン・スエド(bdn, tatadios)らチェンバー楽器を操る面々も参加してのアンサンブルは瑞々しくとても新鮮。
そのヴァネッサ・モレーノ&フィ・マロスティカ・デュオの好敵手と云いますか、'00年からこの編成にて活動してるそうなので先輩格にあたるvo&b のデュオが新作を発表しました。'05年にMPBシンガーとして栄誉あるヴィザ賞に輝いているイザベル・パドヴァーニと、エレクトリックな6弦ベースを操るホナウド・サッジオラートのデュオ。
IZABEL PADOVANI, RONALDO SAGGIORATO / AQUELAS COISAS TODAS (ブラジル直輸入盤 2,074円+税)
この10年はブラジルとオーストリアを行き来して、欧州の賞なども受賞している実力派。イザベル・パドヴァーニはキャリアの初期にピアノ奏者マルセロ・モノフリとのデュオ作を発表しており、その後もクアルテート編成だったりを従えて正統派MPBとの印象があったのですが、'05年にホナウド・サッジオラートとのデュオで発表した「TONS bass&voice」が国内外で高い評価を得た経緯があります。本作はその続編にあたるアルバムで、襟元を正したように由緒正しき趣のイザベルの澄んだ声と、6弦エレクトリック・ベースをギター的な和音を交えつつスラップしてフュージョニックにプレイするホナウドのアレンジで、ゼー・ミゲル・ヴィズニキ=ルイス・タチ曲"Baião de quatro toques"からギンガ作の"Vô Alfredo"、アシス・ヴァレンチ"Alegria"まで新旧ブラジル音楽をレパートリーとしています。ヴォイス・パーカッションにマルセロ・プレット(barbatuques) 、コントラバスにチバウルト・デロルがゲスト参加。特に耳を惹くのが、バッハのチェロ組曲を引用してスキャットで聴かせるジャコー・ド・バンドリン=エルミニオ・ベロ・ヂ・カルヴァーリョm-4 "Doce de coco"の素晴らしいアレンジと、やはり全編をスキャットで染め上げるトニーニョ・オルタm-5"Aquelas coisas todas"。同様の編成ながらコントラバスのプリペアードも交えるヴァネッサ・モレーノ&フィ・マロスティカと同じ楽曲 "Samba com Pressa"も取り上げているので、双方の解釈の違いを聴き比べてみるのも楽しみな体験です。
先日は店を臨時休業して、ブラジル関係の仲間たちと"研修"に行ってまいりました。粋な演出とセットリストに未だ興奮冷めやらぬ全35曲のキング・オブ・ロック・ショーだったわけですが、中学生だった頃から魅了されてきたスーパースターの底知れぬエネルギーを目の当たりにして、私などビキビキなプレイや東ド・スケールの仕事はできずとも、小さなことからコツコツとやっていこうと決意を新たにしました。 *当日の会場、外の風景。グッズはすべて売り切れ... "JUDGE ME ALL YOU WANT" と書かれたメッセージ黒Tシャツ欲しかったす。
では話を当店の取り扱い商品である、ムシカ・アクースティコに戻して。
楽器が少なければ少ないほどその人となりは伝わりやすくなるのですが、ブエノス・アイレス郊外、州北部にあるロス・トルドス出身の女性シンガー・ソングライター、ナティ・ベラサテギが出身地のサバーブな空気を如実に描いたフォルクローレのアルバムをリリース。かつてから其処にあった良きものと、モダンに洗練されたテクスチャーが往来する素敵な作品となっています。
NATI BERASATEGUI / LIBÉLULAS (アルゼンチン直輸入盤 2,287円+税)
タイトルの「Libélulas」はトンボという意味。風薫る平野を滑るように飛ぶ昆虫の姿が瞼に映るように、シンプル極まる編曲はリト・ビターレのギタリストとしても知られるマリアーノ・デルガードによるもの。パブロ・ヒメネス(b)、パブロ・ガルニエリ(drs)に、自身がリーダーを務めるジャズ・グループでも作品を発表している木管奏者のビクトル・カリオンが笛で参加。柔らかな包容力に富んだナティの唄声が、ギター中心のアレンジに映えます。'12年に発表した1stアルバムでは、古典的なフォルクローレを多く扱ったという経緯もあり、この二作目ではウアイーノ、トリウンフォやビダーラの様式に則ったオリジナル・コンポーズが12曲中5曲を占め、川沿い音楽の瑞々しさを存分に携えたm-5"Almas de agua" のほか、アルマンド・テハダ・ゴメス作m-3"Zamba del que anda solo"、レダ・バジャダレス作m-8"Milonga con sauces"、ルベン・クルス作のチャカレーラm-9"Don Santiago" など郊外で生まれたフォルクローレ・スタンダードたち、そしてハーモニカ奏者フランコ・ルチアーニをゲストに迎えたm-10"Barco Quieto" は音楽家の視点からも注目を浴びるマリア・エレナ・ワルシュの作品。ピアノにレアンドロ・マティアス・マルケサノを迎えて、作者であるマリアーノ・デルガードとナティがデュエットするm-6"A Donde Fue Su Voz"のドラマティックな展開に惹かれます。
さて今日発売日となる国内盤のご紹介をさせていただきます。アルゼンチンのタンゴ楽団といえば、典型的(ティピカル)な編成とスタイルを保ったコロール・タンゴのような楽団から、ヘッドバンキングをするぐらいにアグレッシヴなフェルナンデス・フィエーロのようなグループ、そして現代音楽やジャズのエッセンスを強く感じさせるディエゴ・スキッシのキンテート、とピアソラ以降も様々な表現が表舞台に登場してきました。今回のサンティアゴ・シルミ・キンテートはバンドネオンのサンティアゴ・シルミをリーダーに、viola, vln, p, b という編成で、弦楽に重きを置いたアンサンブル。ミロンガやバルスのフォーマットに則りながらも、より欧州のサロン・ミュージック的な淡い色彩、チェンバー、室内楽の色合いが濃く現れたグループです。ラモン・ガルデージャのvibが参加したm-1,4,6 などに顕著な洗練されたコンテンポラリーな世界観が秀逸、シネマティックなインストゥルメンタル作品。
Santiago Cirmi Quinteto / La Vida En La Tierra (インパートメント社 2,300円+税)
アルゼンチン新世代タンゴの本年最重要作にして、ここ日本で盛り上がる「新しい室内楽」の文脈でも注目すべきアルバムの誕生。若きバンドネオン奏者にして作曲家、サンティアゴ・シルミが自身の五重奏団を率いて吹き込んだアルバムが日本先行リリース!
映画「スウィング・ガールズ」や小説「楽隊のうさぎ」のヒットからか、近年吹奏楽/ブラスバンドを評価する機運が著しいですが、これには中学生の頃に吹奏楽部に在籍していた私としても鼻が高い思いです。当店のお客様でも、「金管の〜」、「木管の〜」と菅もののアルバムをご指定にてお求めいただくお客様も複数いらっしゃいまして、やはり欧米のジャズだけではなく、ブラジルやアルゼンチンならではのリズムやハーモニー構築がなされたものが人気を博しています。こちらは、90年代から活動を継続、ファビアナ・コッツァやアミルトン・ヂ・オランダなどポピュラー界の様々な音楽家とコラボも行っているサンパウロのジャズ・シンフォニー・オーケストラが25周年を記念して制作された一枚で、1930年~70年代までブラジルのラジオやTVにてよく掛っていたかの地のスタンダードを、シンフォニー・オーケストラ用にビッグバンド・スタイルで編曲。ジルベルト・ジル=ドミンギーニョス作の北東部賛歌"Lamento Sertanejo"やジョビン"Chovendo na Rosaria""Demais" に"Garota de Ipanema"、エギベルト・ジスモンチ"Palhaço"、お隣アルゼンチンのガルデル"Por una Cabeza" やピアソラ"Years of Solotude" まで、音程を持った打楽器群も交えた壮大なスケール感でフレッシュに解釈。ジョアン・マウリシオ・ガリンド指揮/ファビオ・プラド指揮補佐
ORQUESTRA JAZZ SINFONICA DO ESTADO DE SÃO PAULO / JAZZ SINFÖNICA 25ANOS(ブラジル直輸入盤 2,601円+税)
こちらはサンパウロからミナスに場所を移し、マエストロ・ホドリゴ・トッフォロが率いるオルケストラ・オウロ・プレートのビートルズ歌曲集。こちらのオーケストラもフェルナンダ・タカイやアルセウ・ヴァレンサを招いてコンサートを行ってきた経歴を持ちます。大編成の弦楽オーケストラにegやeb,drs もしっかり音作りを仕込んで参加するオーケストレーションで、ビートルズの佳曲の数々を解釈。ミルトンにロー、トニーニョ、クルビ・ダ・エスキーナスの面々が衝撃を受けたのがビートルズだと言いますから、時代が移り変わって周り回ったということでしょうか。
ORQUESTRA OURO PRETO / THE BEATLES AO VIVO (ブラジル直輸入盤 2,601円+税)
2016年6月26日(日)2:00om~ *小雨決行
11 a festa de aniversario - tocando no terraco
[大洋レコードのテラスで開店11周年記念パーティー] 入場無料 / アルゼンチン・ワイン有料
投げ銭をお願い致します。 主催:(有)大洋レコード 協力: 酒類卸(株)ひのや
LIVEs unplugged :
ryosuke itoh e shiho (vo&g / flute&vo / ukulele b)
2005年より神楽坂でブラジル・アルゼンチン等からのセレクトCD店/レーベル 大洋レコードを運営。その傍ら南米のS.S.W.達と直に触れ研磨した表現、親密な雰囲気にこだわった夫婦デュオ”ryosuke itoh e shiho”として自作自演の作品制作、ソロとしてもライヴ活動や訳詞提供に勤しんできました。今となっては稀少な8cm CDの形態で「en la casa」「lá em casa」「boy no theme as canções de boøwy」「cerebración」を発表、目下新たな視点によるepを制作中。今回のGIGも三重野徹朗(ukulele b)を迎えて。
ヒガシノリュウイチロウ (vo&g)
[bar north marine drive 渋谷区宇田川町]
2003年にオリジナル6曲を収録したファーストミニアルバム『Samba03』でデビュー。2004年にはボサノヴァカヴァー6曲入りのセカンドミニアルバム『bossa04』をリリース。以後8年間音楽活動を休止するが2013年よりライヴ活動復活。2016年に入ってからは『Samba03』に続くオリジナル・フルアルバムを作るべく作曲活動に勤しんでいる。
近田ゆうき(vo&g)
国立音楽大学卒業。大学ではピアノ、声楽を学ぶ。 2007年より演奏活動を開始。同年、初渡伯し、本場の音楽を聴き感銘を受ける。 2011年9月、1stソロアルバム「Samba sem nome(名前のないサンバ)」(リオデジャネイロ録音)を全国リリースした。 2014年6月、日本語のオリジナル曲を集めた2ndソロアルバム「5月の光」でティートック・レコーズよりメジャー・デビュー。 現在は、ブラジル音楽を追求すると同時に、日本語の持つ魅力を改めて見つめ直し、日本語のオリジナル曲制作にも力を入れている