開放弦のきらめいた音色が気持ちよいカイピーラ・ギターの作品2種
ブラジルのムジカ・カイピーラ、郊外の農民らによって親しまれた真のサバービア音楽ですが、ここで使われた楽器にヴィオラ・カイピーラ、カイピーラ・ギターというものがあります。鉃弦を複弦5コース張ったギターで、12弦フォーク・ギターと同様に開放弦できらきらした高い方の倍音を聴くことができます。今日はこのカイピーラ・ギターが活躍する2タイトルを。
RICARDO VIGNINI & ZE HELDER / MODA DE ROCK II (ブラジル直輸入盤 1,750円+税)
ミナス出身のS.S.W.でソロとして良作を発表しているゼー・エウデルと、アメリカのボブ・ブロウズマンやウッディ・マンとの仕事もしているヒカルド・ヴィギニーニ、内陸部のテイストを残しつつも革新的なムジカ・カイピーラを奏でるマトゥト・モデルノでのバンド活動を通じてMPB界にきちんと足跡を残しているふたりのカイピーラ・ギター奏者が'07年に結成したインスト・カイピーラ・ギター・デュオのプロジェクトがモーダ・ヂ・ホッキ。まさにブラジルのカントリー・ミュージックと呼ばれるほどに牧歌的な、カイピーラ・ギターの音色のみで往年のメタル・チューンをカヴァーしてしまおうというのですから驚きです。ブラジルが誇る重厚メタル・バンドのセパルトゥラに始まり、スレイヤー"Raining Blood"、アコーディオン奏者も参加したブラック・サバス"Laguna Sunrise"、AC/DC"Thunderstruck"、メタリカ"Fade the Airway"、アイアン・メイデン"Wasted Years"などをカイピーラ・ギター二本でカヴァー。これら意表をついたメタルのカヴァーだけでなく、開放弦のビリつきをシタールに見立てたり、ボトルネック奏法やイフェクトを用いたりもするロック・クラシックのピンク・フロイド"Fearless"、ストーンズ"Paint it Black"、クイーン"I want to Break Free" などは流石にカイピーラを知り尽くした者ならではの解釈。真剣なのですがどこか可笑しさが綻びだすPVの作りも秀逸。
こちらもブラジルから、コントラバス奏者としてもアンドレ・メマーリ作品などコンテンポラリーなムードを持った作品に参加してきたカイピーラ・ギター奏者のネイマール・ヂアスと、コントラバス奏者のイゴール・ピメンタによるデュオ・プロジェクト。ビートルズの名曲たちを、室内楽の親密さと現代ジャズの手法もとりいれて大胆に解釈。ブラジルの郊外発祥で歴史を持った伝統楽器が20世紀最大のポップ・カルチャーに新鮮なコンストラクチャーで挑み、また別の鮮やかな表情を見せてくれています。穏やかな日にゆっくり聴いていたいアコースティック・インストゥルメンタル好盤。
Neymar DIas, Igor Pimenta / come together project (ブラジル直輸入盤 2,037円+税)
- 2016.02.28 Sunday
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- 18:05
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- by 大洋レコード