フラヴィオ・ヴェントゥリーニ観覧記+ミナスのS.S.W.アフォンシーニョの新譜
一昨日の晩は牛込箪笥区民ホールにミナス・ジェライス出身のベテラン・アーチスト、フラヴィオ・ヴェントゥリーニを観に行っておりました。1949年ベロ・オリゾンチの生まれですから66歳。70年代にウ・テルソ〜クアトルゼ・ビスとプログレのバンドを率いて活動、ミルトン・ナシメントの「Clube da esquina 2」に"Nascente”の曲提供と参加を果たし、その名を知られることになったミナス産音楽界の重鎮です。昨晩のステージではイアモニをしながらシンセサイザーを弾き唄い、藤本一馬さんら日本在住のミュージシャンとこの夜限りのセッション。一曲目から"Clube da esquina N.2"で、その年齢を感じさせないファルセットと浮遊するメロディを歌うその情感溢れた声にミナスの涼しげな風を感じ、この日集まった多くのお客さんを魅了していました。恐らくはこの音色が入ってないと、という名人ならではのこだわりがあるのだと思いますが、シンセに多くの装飾音を仕込んで同期で演奏する場面が多かったように思います。個人的には生ピアノで聴いてみたかった楽曲も幾つか。しかし、複雑なコード展開と音符の上から下までを往来して紡ぎだす音楽が醸し出す何ともいえない幻想的な風景は、やはりミナスの音楽が好きなんだという個人的嗜好の確認にもなりました。終演後にコンサートのことなど語らいながら、少数有志で行った神楽坂グルメ・リポートも楽しかったです。
さてミナス・ジェライスといえば前述のクルビ・ダ・エスキーナのムーヴメントが有名ですが、ビートルズとジャズにブラジル音楽を掛け合わせたこの流れの遺伝子を色濃く受け継ぐS.S.W.、アフォンシーニョが10枚目となるオリジナル・アルバムをリリースしました。
affonsinho / la de um lugar (ブラジル輸入盤 2,204円+税)
'61年ベロ・オリゾンチの生まれで俳優やジャーナリストの仕事も経験しながら、幼少期に凄したリオでボサ・ノヴァに開眼。フォーキーなシンガー・ソングライター然とした楽曲にロックやブルースのエッセンスも採りいれ、それでもミナス音楽独特の瑞々しさを前面に打ち出したポップな作風でブラジル音楽好きに留まらないファン層を獲得している存在。今作でも冒頭のポップ・チューン"No carinho" の疾走感、蒼い風景に心を持って行かれます。アフォンシーニョが敬愛する西欧のロックやブルースの要素を今まで見せてきた以上に、あきらかに採りいれたと判るのが、続く"Um novo tom" やm-4"O amor me pergunto"で鉄弦agのストロークの傍らわななくデイヴ・ギルモアを彷彿とさせるegのトーン。アルバム最終曲m-10 "Love you, Blues"は友人の名前に並び、名だたるブルース・ギター弾きたちに捧げたインストゥルメンタル曲となっています。このひとの持ち味の一つでもある洗練された現代的なボサ・ノヴァというところでは、アンリ・サルヴァドールをモチーフとした仏語歌詞曲m-5 "Est pour te dire"に顕著です。ナチュラルなソフト・ヴォイスと多重録音されたコーラス・ハーモニーが醸し出すロマンティストの風情、頭の中でしかと構築されたベッド・ルーム・ミュージシャンの如き世界観に、敬愛するブルージーなギターという別要素を注入して新しいドアを開けてみせたのが本作。
- 2015.08.30 Sunday
- -
- 14:05
- comments(0)
- -
- by 大洋レコード