余韻の中に光と影

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    「どの場所でどの部分を叩けばどのくらいの響きになるのだろう」ということを熟知しているのが、真のバテリスタ- 打楽器奏者だと思うのですが、真のバテリスタは他者との解逅を強く願っているようなところが見受けられ、そのセッションがしばしば神秘的な音楽を生み出すのです。

    百戦錬磨のバテリスタ - 打楽器奏者が3人。ジスモンチやトーキング・ヘッズとの仕事で世界的に知られるナナ・ヴァスコンセロス(ペルナンブーコ出身)、独創的なパンデイロの演奏法でここ日本でも絶大な人気を誇るマルコス・スザーノ(リオ・デ・ジャネイロ出身)、アメリカのヴァイオリン奏者トレイシー・シルヴァーマンとの”North meets South" でのユニークな発想が高い評価のカイト・マルコンデス(サンパウロ出身)。そして女性1人男性3人からなるパーカッション・グループ - コラソン・キアールテーラ、トータルで7人から成るインストゥルメンタル・リズム・セッションが本プロジェクト - SEMENTEIRA sons da percussao (”植え付け" - パーカッションの音響)。

    版元から注意を促されたのですが、「表のジャケットでも裏のジャケットでも、このブラジルtop3 のパーカッショニスタが 一緒に 演奏していると書かれていないんだ。たまにミュージシャンが店の人に優しくないことがあるよね」とのこと、確かに。

    SEMENTEIRA (Nana Vasconcelos, Marcos Suzano, Caito Marcondes, Coracao Quialtero) / sons da percussao (ブラジル直輸入盤 2,200円税込)

    パーカッションの音響と題にあるように、これはバツカーダ(打ち合い)のアルバムではありません。洗濯ホースにカリンバ(親指ピアノ)、陶器にスチールパンを逆さまにしたような楽器、水の入ったグラスのベルにビリンバウ、タブラ、束ねた草にカホンとパンデイロ....さまざまな"響き"を持った打楽器が幾重にもコントラストを織りなして全く新たな音場を生み出している作品です。入り組んだビートは踊る為のものではなく、より人が自然に近づく為の大地の息吹であるかのよう。ナナ・ヴァスコンセロスが探求して来た音響学的な表現と、パンデイロ・マスター - マルコス・スザーノが取り組んできたマイキングにエフェクト/サンプラーのテクノロジー、カイト・マルコンデスの得意とする身体を使った表現 - たとえば咆哮のような声でエキゾチックなハーモニーを作り上げたり、と三者三様の表現が解逅。ここには実験的な試みがいくつもいくつも折り込まれています。ブラジルの豊富なリズムから、オリエンタルなハーモニーまで、世界中の音色をその手中に。神秘的な響きが物語のように展開してゆく様は、他の音響ものとは一線を画す作品です。



    日本全国を跳び回るインスト・トリオ

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      topページでお知らせしています通り、現在、商品カテゴリーを編集中です。国別となっていたものを、音の印象で捜せるように変更しています。ご迷惑をおかけすると思いますが、入力済みの商品データは消える事はございませんので、ページ左側にございます [商品検索]もお試しになってみてください。

      ブラジル音楽の小編成で行なうサンバ演奏の原型となったともいわれる、インストゥルメンタル・サロン・ミュージックがショーロ。このショーロにインスパイアされて、結成された男性ひとり(g)、女性ふたり(cl) (vln)、のトリオがコーコーヤ (ko-ko-ya)。いま日本中を跳び回ってツアーしているコーコーヤの素敵な新譜が届きました!

      ko-ko-ya / Frevo ! (happiness records 2,100円税込)

      ゴンザレス三上(GONTITI)のソロ・アルバムへの参加や、アニメーション・サントラへの楽曲提供などでその知名度を着実にあげているコーコーヤ。笹子重治(ギター)、江藤有希(ヴァイオリン)、黒川紗恵子(クラリネット)、各氏のブラジルをはじめとするミュージシャンとの交流や、各々の活躍もあり内実ともに充実した音源となっています。m-1の"Frevo!"ではブラジル北東部のダンス・リズムに載せて早いパッセージを滑らかに演奏したかと思えば、阿吽の呼吸で流麗なメロディをやりとりするm-4”小鳥のワルツ”、三人で分担するフレーズが不思議に輪廻するm-6"しんかんせん”、ゆったりとした子守唄のように聴こえるm-7"始発駅”、クレズマティックなショーロm-8”振り向きショラオン”...このヴァリエーションの幅広さ。メンバーそれぞれが書いたオリジナル・コンポーズのユニークな曲名群に現れているように、ブラジル音楽のリズムとどこか日本的な情緒が溶け合い、春めいた朗らかな気持ちにさせてくれるグッド・ミュージックです。
      ゲスト参加 : ゴンザレス三上(g)、岡部洋一(per)

      http://www.myspace.com/kokoya

      メロウなキューバン・ジャズ

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        大洋レコードとしては本来、キューバ音楽はテリトリー外なのですが、このような出自も、融合具合も、興味深い大人の音楽でしたら!

        Mateo Stoneman / Mateo (production dessinee 国内盤 2,415円税込)

        解説によると、ニュー・ハンプシャー生まれのマシューが大都市L.A.で暮らすうち、窃盗で服役してしまい、その際にキューバ音楽の魅力に取り憑かれスペイン語やキューバ音楽のハーモニーを学んだ、と衝撃的なキャリアの持ち主なのですが、本盤を聴いてみれば犯罪や俗悪さとは正反対の方向を向いた甘美なラテン・ジャズと柔らかなS.S.W.流の唄い口がマッチングした唯一無比の音楽なのです。西語を完全に習得したマシューは自らのアーチスト・ネームをマテオとあらため、ハバナで憧れの「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の面々とレコーディングを敢行します。いまから10年くらい前にワーナーからリリースされた盤が素晴らしかったカチャイート・”カチョ”・ロペスのコントラバス、ブルーノートなどでもお馴染みロベルト・フォンセカのピアノを中心に、管などを含むラテン・ジャズ・オーケストラを従えて、アルバロ・カリージョ(メキシコ)やオズバルド・ファレス(キューバ、quizas, quizas で知られる...)のボレロ、ラテン・クラシックをゆったりと持ち前のソフト・ヴォイスで歌っています。ハバナの女性シンガーとのデュオもあり、落ち着いた雰囲気のなかに音楽的内容もしっかり充実させた傑作。



        春一番が吹きて

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           いよいよこの後は春めいてきますね。おでかけ日和で、是非”神楽坂駅矢来口先右オレル”大洋レコードへ、と言いたいところですが....、本日は19時までの営業で、明日の日曜は第3日曜日でお休みをいただきます。

           一昨日のbar cacoi でのレイチェル・ダッド、ロジ・プレイン、ICHIのライヴ。音響オペレートを担当させてもらったのですが、barのキャパシティを埋め尽くす大勢のお客さんを前に、ショーの内容が実に素晴らしかったです。インディペンデント・ミュージックの裾野はほんとうに世界中に広がっているんだなというのを実感。設営中にロジがCDの封詰めをしていたり、レイチェルの手芸作品が売られていたり、ICHIの手作り楽器たちもあり。この姿勢にも共感します。

           私が日本のインディペンデントなミュージシャンで最も敬愛しているのは、sakanaなのです。10年くらい前、ちょうど「Welcome」(徳間ジャパン・絶版 / 勝井裕二、ポップ鈴木、ジム・オルーク参加)が出た後で「Blind Moon」のリリース時辺りは、いまの嫁と連れ立って足繁くライヴに通っておりました。吉祥寺のmandala 2 が多かったように記憶しているのですが、回を重ねる毎にお客さんの数が増えて、そのうち早めに行って整理券を取らないと入れないようになり、と懐かしい思い出です。ちょうどその頃働き始めていたレコード会社の輸入盤部門で扱っていた「Japanese Independent Music」(sonore - france)という本には、このように紹介されています。

          Sakana is a duo of acoustic guitarists who attempt to play very traditional American folk music. Pocopen's voice sings suave melodies often accompanied by English texts. Yet in a few couplets more oriental influences can be felt and offer a really delicious mixture.

           この2月にリリースされた待望の新作が入荷してきました!

          sakana / campolano(sakana records 2,500円税込)

          アコースティックなワルツに始まり、前作「Sunday Clothes」からの流れを汲んだ、ブラジル音楽からの影響も伺えるデュオによる親密なトラックでは、かつての名作「portrait」での試みを思い起こさせるリズム・ボックスが使用されていたりもします。大野由美子(バッファロー・ドーター、mini moog)のアナログ・シンセ・ベースと楠均(くじら、drs)、中村まり(cho)、をゲスト・ミュージシャンに迎えて郊外のguzuri recording studio で録音されたスモール・コンボ編成によるサウンドには、ラヴァーズ・ロック的佇まいのものも。2人の爪弾くギターのコントラストが醸し出すイマジネイティヴなトーン、そして旧き良きアメリカ純文学の世界観を日本語に拓いたような詩情たっぷりのPocopenの唄は、更にワン・アンド・オンリーの存在感を増して。「welcome」に収録の"惑星”が歌詞を新たに”惑星-2"としてリヴァイズド。日本のインディペンデント・ミュージック界が誇るべき至宝が放った輝ける傑作。


          明日2/17 はbar cacoiで

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            昨日は吉祥寺にあります「キチム」というお店で行なわれたライヴ・イベント、
            "Rachael Dadd, Rozi Plain, Ichi, Japan Triangle Tour"

            へ行って参りました。大洋レコードのセレクトCD店で取り扱う品目が非英語圏のポピュラー・ミュージックということで、英国出身のレイチェル・ダッドらのCDを店には置いていないのですが、3年前のフロレンシア・ルイス日本ツアーの際に最終日Seco Bar でレイチェル・ダッドとは共演していたり、Ichiさんのライヴは4、5年前にマンダラ2で見る機会があったり、と親近感を感じ馳せ参じた次第です。
             まさに冬景色が似合うブリストルのインディペンデントなサウンド、オープン・チューニングのギターを手に雰囲気ある唄声で歌うロジ・プレイン、自作楽器やスチール・パンに鉄琴などで唯一無比のエンターテイメントを見せるIchi、バンジョーやピアノにギターと持ち替えて「ボートのモギリを仕事にしていた」経歴の際に眼にした水辺の風景が多く反映されているかの澄んだ歌の数々。
             私が店でよくお薦めしているブエノス・アイレスの水面の風景を反映させたインディペンデントでハンドメイド・タッチの音楽と通じるものを多く感じ取りました。bien show !
            このような音楽がお好きでまだ彼女達の音楽に触れる事のなかった方々にも、おすすめです。
             明日 2/17(thur) 渋谷・公園通りのCOENビル5階 bar cacoi (info&reservation 03-5456-2522)で19:30開演です。私、音響のお手伝いに現場に入る予定。よろしかったらぜひ。


            PR

            大洋レコードは東京・神楽坂のセレクトCDショップです。

            ブラジル・アルゼンチンの現在のインディペンデントなシーンからの輸入盤CDを中心にお取り扱い。

            東京都新宿区赤城下町10-10 東京メトロ東西線神楽坂駅1b出口3分。

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            が定休日です。 2022年5月26日、大洋レコード&Delicatessen として移転 OPEN。 11時〜18時の店舗営業、(土曜は14時~18時)。毎水曜・日曜・祝日定休とさせていただきます。

            03-3235-8825


            WEB通販はオフィシャル・サイト taiyorecord.com にて


            * information

            [以下の音楽雑誌に店主が寄稿しました]


            「ミュージックマガジン」ミナス特集にレコード・レビューを寄稿予定。(2022/6)


            FI MAROSTICA / VISÃO DO MAR (RCIP-0321 2021.6.30) ライナーノーツ


            ラティーナ2月号 (2020/1/20発売)

             

            「20年代はこの国の音楽に注目したい」


            e-magazine LATINA 「いま最も輝ける存在、サンパウロの女性シンガー、ヴァネッサ・モレーノへのロング・インタヴュー」(2022年2月23日)


            [国内盤リリースのご案内]

            Flor Sur Cello Trio, Airena Ortube & Julian Beaulieu / Un Solo Jazmin (大洋レコード国内盤CD 2022.7.23発売)好評発売中!


            SALOMÃO SOARES & VANESSA MORENO / YATRA-TÁ (TAIYO0041 2022.2.28) 好評発売中!


            VANESSA MORENO / SENTIDO (TAIYO0040 2021.6.26) 好評発売中!


            Carlos Aguirre / Canciones I 譜面集 46p(TAIYO0039 2020.12.26) 好評発売中!


            TINCHO ACOSTA (TAIYO0038 2020.8.28) 好評発売中!


            CHICO BERNARDES (TAIYO0037 2020.7.31) 好評発売中!


            MERY MURUA & HORACIO BURGOS / ROBLE 10 AÑOS (TAIYO0036 2020.6.13 release 限定盤) 好評発売中!


            ENSAMBLE CHANCHO A CUERDA / POSDATA (TAIYO0035 2018.12.22 release 限定盤) 好評発売中!


            FERNANDA TAKAI / O TOM DA TAKAI (TAIYO0034 2018.6.5 release) 好評発売中!


            TULIPA RUIZ / TU (TAIYO0033 2018.3.15 release) 好評発売中!


            PATRICIO PIETREK GRUPO / PAJÁRO AZUL(TAIYO0032 2017.12.04 release)

            好評販売中!


            ryosuke itoh e shiho - minha estrada (TAIYO0031 2017.6.24 release)

            販売中!


            [メディア情報]

            2022/5/31 (火) 15時 TOKYO FM 「The TRAD」 (パーソナリティ:稲垣吾郎) 生出演。初夏・新緑に似合うブラジル音楽を紹介させていただきました。


            2022/1/28 (金) 7:20分頃~ 放送予定 フジテレビCX系 『めざましテレビ』"なにわ男子のなんでやねん!" にて、長尾謙杜(なにわ男子)さんにブラジル・アルゼンチン音楽専門店 - 大洋レコードを取材していただきました。


            [記事掲載のご案内]

            2024年2月20日発売 雑誌「MINA(ミーナ)」4/5月号 "TOKYO MANIAC SHOP探訪"に大洋レコードの記事をご掲載いただいております。


            2022年12月 雑誌(ZINE) WAVE vol.2 “めくるめくCDの世界” 雨と休日さんやsnsでお見かけする100円CDディガーに8cm CD専門dj...錚々たる面々に混じって取材記事をご掲載いただきました。

            2021年11月20日発売、雑誌「散歩の達人12月号」神楽坂・飯田橋特集に当店が掲載されました!前回の掲載から何と8年ぶり、通算3回目の登場となります。


            2020年7月フリーペーパー 「新宿プラス vol.12」 #音楽のまち新宿 #武田真治 #saxplayer にご掲載いただきました。


            体験型アミューズメント・キッザニアの広報記事「キッザニアの窓」に大洋レコード伊藤のインタビュー記事とおすすめタイトルをご掲載いただきました。

            「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.3 南米音楽



            女の子のスポーツライフをもっとファッショナブルに。「HBハミングバーズ」2018 Summer vol.14 に"Playlist for Summer"としてオススメ5作品の小さなレヴューを書いています。


            5/9発売 「POPEYE 6月号 "僕たちの好きな音楽。"」にて大洋レコードが掲載されます。川沿い音楽の取材も受けました。


            2018年1月末、神楽坂のアップデイトされた情報が満載の「帰ってきた!神楽坂本」(エイ出版)が発売されました。今回は"Culture 文化"のページに大洋レコードをご掲載いただいてます。ぜひ街ぶらショッピングのお供に。


            ひとまちっくす神楽坂「南米音楽と横浜ベイスターズと私。大洋レコードの伊藤亮介さん。」


            NUMBER WEB "野次馬ライトスタンド" 「ベイ戦士よ、ブラジル音楽を聴け!東京の路地裏から愛を込めて。」


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